(その2) 「どけ!松コースのお客様が腰痛で到着だ!邪魔だから『空気』はさっさとどんぐりへ行け!」と言い突き飛ばされた。 その瞬間、自分がいた場所に5人の救急隊員に付き添われて豚のような丸顔の男が乗った車椅子が滑り込む。「どんぐりコースへ」と冷たく言い放ったコンシェルジェが満面に心配そうな表情を作って駆け寄る。 「どうなさいましたか?野田様」 「腰が…腰が痛い…」 「腰、腰ですね!」 慌てて、院内PHSで連絡を取る。 「今、整形の専門医が参ります」と優しく腰を摩りながら答える。 美人に腰を摩られてまんざらでもなさそうな豚野郎は、自分のために突き飛ばされて痛みにのた打ち回っている私の事など全く眼中にない。 「大丈夫か、その医者は?」と偉そうに聞く。 「もちろんです。金に糸目を掛けず招聘した腰のゴッドハンドと呼ばれる名医達です」 そこへ、救急セットをワゴンに乗せ5人の医師団が走って到着した。ご丁寧にAEDまで持っている。 「さ、さ、こちらへ」と医師団の最年長らしい医師がヘイコラ頭を下げて、診察室へ自ら車椅子を押しながら、あれこれと丁寧に豚野郎から話を聞いている。 健康保険証だけの自分が、腰の激痛を我慢しながら、どんぐりコースへ3m程イザっていく間の素早い対応であった。 |