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第一章 始まり 「痛った・た・た・た！」 くしゃみをした瞬間、急に激痛が腰に走った。平成33年のある日、TPPに日本が参加した日から10年目を迎えたとテレビ・ニュースをソファーに座って見ている時に鼻がムズムズした次の瞬間であった。 腰が痛くてとても動けない。しばらく脂汗を流して我慢していたが、どうにもならない。いつもの病院で診てもらうことにした。TPPで解禁後に外資が建てた病院でサービスが良い。いつでも診てくれるし、職員の愛想も良いので安心と評判も良い。 おかげで近所の病院や診療所を使わなくなったら、そのうちに全部潰れた。構うもんか、どうせ開業医なんか金の亡者で、俺たちの何倍も年収があるってテレビが言っていたし、病院の勤務医だって同じようなものだ。医師免許があるだけで高い年収を取りやがって、これが自由競争による淘汰というものだ。競争万歳！ザマミロいい気味だ。 119番を回して救急車をお願いする。受話器の向こうでテープでの対応が始まった。 「火事ノトキハ『１』ヲ、救急ノトキハ『２』ヲ押シテ下サイ」 結構、結構、税金泥棒の公務員など徹底的にリストラして機械にできることは機械にやらせれば良い。救急なので「２」を押す。 「アナタノ地域デノ救急さーびすハ終了シマシタ。民間ノ救急さーびすヲ御利用下サイ。アナタノ地域デノ救急…」 「ん、おい、おい、どうなっているんだ？」と電話に向かって文句を言うが、相手は機械である。 「アナタノ地域デノ救急サービスハ終了シマシタ。民間ノ救急さーびすヲ御利用下サイ…」と、繰り返すばかりで、埒が明かない。 |